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 書架(4)『舞姫 テレプシコーラ』 

今回は手塚治虫賞を受賞した山岸凉子の『舞姫 テレプシコーラ』
(第1部全10巻、第2部全5巻・メディアファクトリー)
舞姫 1―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)舞姫 1―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
(2001/06)
山岸 凉子

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実を言うと、読んだばかりなのです。
掲載誌「ダ・ヴィンチ」はたまに読むので連載中に何度か見てはいたのですが、
山岸作品というのはトラウマになるほどダークなものがあるのと、
主要キャラがどうにもかなり悲惨そうだったので敬遠していたんですね。
でも読み出したら止まらなかった……。
悲惨なキャラも実際いましたが。

かつて『アラベスク』(完全版・全4巻メディアファクトリー)
アラベスク 完全版 第1部1 (MFコミックス)アラベスク 完全版 第1部1 (MFコミックス)
(2010/03/23)
山岸凉子

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において、バレエ漫画の傑作を生み出した山岸涼子が30年(!)を経て描いたバレエ漫画です。
決して「トウシューズの中に画鋲が!」という古典が出てくるわけではありませんが
現代日本のバレエ事情の変化をリアルに描き出してあります。

母親がバレエ教室を営む篠原家の姉妹、千花(ちか)と六花(ゆき)は幼い頃からバレエを習っていた。
しっかり者で才能豊か、かつ努力家でもある姉の千花。
甘えん坊で意志の弱い、想像力豊かな妹の六花。
六花を主人公に彼女が小学5年生から物語ははじまります。
そして六花のクラスに転校してきた空美(くみ)が物語に暗い影を。

山岸涼子はホラーも相当に怖いんですが、読み進むうちに
「何か(よからぬことが)起こるんじゃないか」とハラハラしながら読むはめに。
この作品はホラーじゃないんですが、「一番怖いのは生きている人間」という描写もあるので
安心してハッピーエンドを期待するような読み方はできません。
そして時により徹底的に情け容赦のない展開が待ち受けていたりもしますし。

愛らしく描かれる篠原姉妹はともかく、空美の容姿と境遇の悲惨さが強烈すぎます。
仮にも少女漫画(?)の主要キャラでありながら醜貌。
毒親としか言いようの無い両親に、過去にしがみつく伯母と貧しく厳しい生活。
本人も愛想も周囲への気遣いもない子供(しかも可愛くない……)。
第一部を半分読んだ時点での私の感想は本筋とはずれていますが
「子供は愛されて育つ必要がある」でした。
空美の境遇に六花が入れ替わったとしても、
愛され方を知っている六花ならば周囲の反応も違っているにだろうと。

そして「お稽古ごと」以上を目指すならばバレエは金銭的負担が大きすぎるということ。
バレエだけじゃありませんが、日本は芸術的な人間を育てるための背景ができていません。
スポーツ選手もそうですよね。
オリンピックに出場するようなアスリートであっても経済的支援が整っていない。
篠原姉妹は恵まれた環境(両親の実家や堅実な父親の職業など)があるわけですが、
発表会で主役級ともなると、多数のチケットノルマや相手役への謝礼などがのしかかってきます。
(このあたり、作中にも言及アリ)
実際プロになれたとしても、それで食べていけるのは一握り。

かつて友達に誘われてレニングラードのバレエ団の公演を観に行ったことがありますが、
チケット代がとんでもなかった……。そして客席はガラガラだった……。
ありゃあ、儲けないどころか赤字ではなかろうか。
日本のバレエ団の公演なら観客動員数は身内のみのイメージも強い。
実力があればあるほど、海外に出ないわけにはいかないだろう。
留学も有名校だと許可がおりないとできないし、
奨学金(スカラシップ)のない留学はやはり厳しいし。
私にすらそこまで考えさせてしまいます。

ところで私がすごいと思ってしまったのがファッション。
年齢を公表されていないけれど1969年に漫画家デビューした山岸先生ですし、
現在はおそらく還暦越え。
なのにヒロインの服装や小物などが古臭くないんですね。
某演劇漫画なぞ、最初からそのへんが気になってしかたなかったのに。
ファッション以外でも作中のネットを使った誹謗中傷など違和感なし。
ただ以前から目だっていた主要キャラ以外の脇キャラの手抜きに磨きがかかってます。
第二部のツアコンのSさんなんか一筆書きですかと言いたくなるような。
いっそアシスタントに描かせればいいのにと、通常の漫画なら思わないことすら思いました。
第二部で出番の多い茜ちゃんにしたって、カリカチュア的風貌で、
どうせなら美少女にしてくれよ……。
読者はバレリーナに夢持ってるんだからさぁ。

物語としての整合性を求めるならば第一部のみで終了したものとして、
先を読まないのも手だと思います。
というのも、第二部というのが16歳になった六花が
ローザンヌ国際バレエコンクールに出場する顛末なのですが、
「これで終わりとはあまりにも生殺し」に終わってしまうのです。
面白くないわけじゃなくて、面白いのに、これからなのに!という。
個人的には第一部よりライトで読みやすい第二部が読み返しも気楽で内容も楽しめるのですが、
もうおそらく描かれることのない続きが欲しくてのたうちまわってしまう。
いっそ第二部そのものを「壮大なオマケ」と解釈して期待しすぎない方がいいかもです。

第二部で読者も意識せずにはいられないのがバレエ界の変化ですね。
クラシックだけでなくコンテンポラリー(現代振付家の作品)がこれほど重要視されているとは。
ボレロくらいなら映像で見たことはあるけれど……。
女性の衣装の点から、個人的にはクラシックの方が楽しいんですけどねえ。
たしかに男性ダンサーの活躍の場という点を考えるとクラシックのみは気の毒すぎるけれど。

ちなみに恋愛はまったく出てこない(せいぜい憧れ程度)のですが、
バレエという神に仕える巫女ならばそれも当然なのかもしれません。
タイトルのテレコシプーラは女神ですけどね。

で、こんなに遅れてこの作品を読んだのは、
一月ほど前まで短期連載されていた『言霊』(BE LOBE掲載)というバレエ漫画が
なんか好きだなと思ったからなのでした。
『アラベスク』の第二部も大人になって読み返したらものすごく嵌ったんでしたっけ。
子供の頃に好きだった第一部は、大人には甘すぎて……。
『舞姫 テレプシコーラ』を読み始めて六花の性格設定に、
『アラベスク』の主人公ノンナが結構ウジウジだったのを思い出さずにいられませんでした。
物語には成長する主人公が必要なんですけどね。

この作品はまだ毎日読み返しているくらいの熱の入れよう
(個人的にこの現象を「ループ」と呼んでいます。
はまりこんだら、エンドレスで読み返してしまうという。
短いときで一週間、長いときは二ヶ月くらいという恐ろしさ)なので
実は考察とか頭の中でうじゃうじゃしてるので、また書くかもしれません。
もしかしたらいつか第三部も書いてもらえるかもしれないし?

んで読んだ人向けの感想になるかもですが、
千花ちゃんに、今も連載中の槇村さとるの『ドゥ・ダ・ダンシン』
(集英社ヤングユーコミックス全9巻&ヴェネチア国際編、既刊12巻)を
読ませたかったなあ、なんて思うんですがね。
作中でヒロイン鯛子が踊る『ドンキホーテ』のキトリは見てみたいと本気で思った……。
Do Da Dancin'! 12 ヴェネチア国際編 (オフィスユーコミックス)Do Da Dancin'! 12 ヴェネチア国際編 (オフィスユーコミックス)
(2012/12/25)
槇村 さとる

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高瀬あずみ

Author:高瀬あずみ
関西在住。持ち物をピンクで揃えようと努力中。

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